第二十回 ヒプノセラピーの仕組み（3）

​深いリラクゼーション状態で潜在意識に働きかけることで目標達成や問題解決を目指すヒプノセラピーが効果的な理由を数回にわたってお話したいと思います。

私たちが抱えている問題は、過去の経験が原因となっていることが少なくありません。

例えば、人前で話すのを非常に苦痛に感じるという場合、過去に人前で発言した時に嘲笑され、深く心が傷ついた、というような経験があるかもしれません。特に子供の場合、大人や周りの子供に言われたことをストレートに受け止めてしまうので、何気なく放たれた言葉が何年経っても心に残り、「人前で発言すると悪いことが起きる」「自分は人前で発言すべきではない」「人前で話す能力がない」といった思い込みの原因となりがちです。

ヒプノセラピーのセッションの中でリラックスした状態で、「初めて人前で話すことに苦痛を感じた場面に戻ってください。」とお願いすると、不思議なことにふっとそのシーンが心の中に思い浮かんできます。たとえ忘れていた経験でも、実は潜在意識の中にはすべて残っているので、「人前で話すときに感じる苦痛」を手がかりにするとその記憶がよみがえってくるのです。

記憶の場面に戻ったら、それを心の中で「解決」するためのステップに入ります。例えばその時に感じた怒りを表現して発散する、自分の心を傷つけた相手が目の前にいると想像して言いたいことをぶつける、傷ついた当時の自分に声をかける、その時の状況を今の冷静な視点で理解し、誤解があれば解く、などのアプローチができます。

過去に起こったことを変えることはできませんが、心の中で決着をつけることで、もうそのネガティブな感情や思い込みに囚われる必要がなくなり、すっきりとした気持ちで前に進んでいくことができるようになります。