トラウマは、精神的に大きな衝撃を与えるような出来事がきっかけとなり、時間が経っても後遺症のように影響が残ることで、心的外傷と訳されます。もともと、戦場から帰還した兵士や犯罪被害者などの深刻なケースで注目されたトラウマですが、命を脅かされるようなケースでなくても、日常生活に影響を与えるような過去の体験を持つ人は少なくありません。例えば、学校でいじめを受けたことがトラウマとなって人間関係に不安を抱きやすい、といった場合です。
後々までトラウマとして残る経験と、トラウマにはならないネガティブな経験とでは何が違うのでしょうか?通常、私たちは悪いことがあったとしても、その経験を自分なりに解釈し、処理することができます。例えば人前での発表で失敗してしまった時でも「失敗は誰でもある。今回は準備不足だったから次回は練習をしよう。」というふうに受け止め、先に進むことができればトラウマにはなりません。一方で、その場面において極度のストレス、ショックや恐怖心を感じた場合、脳の処理能力がうまく働かなくなります(子供の場合は特に)。さらにストレスホルモンの働きによってその出来事が強く脳の扁桃体に記憶され、トラウマとして残ることになります。
脳が出来事を「終わったこと」として処理できないと、時間が経っても恐怖心がなくならず、何かのきっかけで突然記憶が蘇ってくる、夢に出てくる、といったことが起こり、その際には心理的苦痛や身体的反応も伴います。こういったトラウマが原因で様々な心身や人間関係に問題を抱えるケースは珍しくありません。
次回はトラウマを軽減する方法についてお話したいと思います。