最近、小さいことでイライラし、心が休まらない感じが続いた時、ふと「ラディカル・アクセプタンス」について思い出しました。今日はこのコンセプトについてご紹介したいと思います。
ラディカル・アクセプタンスは弁証法的行動療法という心理療法の一部として、心理学者のマーシャ・リネハン氏によって提唱されました。また心理学者タラ・ブラック氏の著書「ラディカル・アクセプタンス」は世界20か国で翻訳され、ベストセラーになりました。ラディカル・アクセプタンスとは根本的、徹底的に受け入れる、という意味で、仏教の教えに深く影響を受けた考え方です。
私たちの心は、無意識のうちに常に何かと戦ってしまいがちです。自分、他人、周りのこと、社会に対して常に「もっとこうあるべき」「〜すべきでない」と判断や批判を繰り返したり、過去の記憶や将来の不安などに気を取られていたりすると「心ここにあらず」になり、目の前にある現実をあるがまま受け入れられなくなってしまいます。
また「自分には価値がない」という自己否定は心の中に不安や焦燥感を巻き起こし、そこから逃げるための衝動的な行動や過度の行動(飲み過ぎ、食べ過ぎ、頑張り過ぎ、各種依存症など)につながります。そして衝動をコントロールできずに行動した後は後悔や自己嫌悪の念に襲われるという悪循環になります。
ラディカル・アクセプタンスは、問題のある現状にも、心に湧いてくるネガティブな感情にも抗うことなく、まずはいったん受け止めようという考え方です。受け止めるということは決して、改善の努力をやめて現状に甘んじるべき、いうことではありません。衝動的な行動に出る前に、まずはいったん、あるがまま「はっきり見て(正見)」、「優しく寄り添うように共感する(慈悲)」ことで心の中を吹き荒れる嵐が自然に収まるのを待ちましょう、ということです。落ち着いた心で状況を見ることで解決策が見えてきますし、心が苦しみで疲弊しなくなると行動する力が湧いてきます。