外出規制も少しずつ緩和されてきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。今回は、2013年に日本で出版されて以来ロングセラーになっている『嫌われる勇気』で紹介されたアドラー心理学の「課題の分離」について取り上げたいと思います。
課題の分離とは、簡単に言えば相手の課題と自分の課題を分けて考えるということです。相手にしかコントロールできないことは相手の課題であり、無理やり踏み込んだり、自分の課題として引き受けたりしない。逆に、自分にしかコントロールできないことは自分の課題として引き受け、相手の干渉を受けたり、相手のせいにしたりしない。そのことで相手との関係をシンプルにし、人間関係から生じる苦しみを軽減する、というコンセプトです。
私が今、課題の分離が大切だと思う理由は二つあります。
一つ目は、家族と同居している人は家族と過ごす時間が大幅に増えていることです。それ自体はよいことである反面、夫婦間、親子間で衝突する場面も増えているかもしれません。相手の悪いところが目につき「〇〇すべき/すべきでない」と干渉し合うとお互い、つらくなってしまいます。
もう一つは、新型コロナや人種差別問題、政治情勢など、社会に不確定要素の多い状況だということです。ニュースを見ると不安や怒り、悲しみなどネガティブな感情をかきたてられることもありますが、一つ一つの現実と「戦っている」状況が続くと、心が疲弊していきます。
これらの状況では、ある程度自分の課題と自分以外の課題を線引きして考えると心が楽になってきます。かといって、アドラー心理学では「私には関係ないから」と冷たく突き放すことや、社会に無関心でいることを勧めている訳ではありません。他の人は自分の期待通りに行動する訳ではないし、自分も他の人の期待通りに行動する必要はないことを理解した上で、共同体や家族の一員として自分が最善と思う働きかけや行動をすることを勧めています。